以前のエントリーで書いた、
カンボジアの『人』の魅力。
それを初めて感じたのは僕が21歳の時。
学生時代に、初の一人旅として挙動不審になりながら、
無駄に詰め込みすぎ、
重くなってしまったバックパックを背負い、
タイ、カンボジア、ベトナム、マレーシアを旅したあのひと夏の旅。
僕はカンボジアで、今までの人生で味わった事の無い、
喜怒哀楽を味わい、自分という存在に向かい合い、
日本と言う国で生まれた優位性を知った。
その結果が、良くも悪くも、
今の僕なんだと思う。
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僕はバンコクのカオサンから出ている
シュムリアップ行きのバスに乗り込み、一路カンボジアを目指した。
バンコク→シュムリアップまでバスの料金は
300バーツもしなかったと記憶している。
バンコク→国境の街アランヤプラテートまでは、
何の苦もなく、快適に到着した。
「なんだ、こんなもんか」ってそこまでは楽観視していた。
そして到着したそこには、
島国から来た僕には、いささか理解できない、
”国境”と言うものがあった。
僕はこの足で、人生初の陸路での国境を超える事になるのだが、
そこを取り巻く喧噪はとても衝撃的だった。
ゾクゾクした。
週末の歩行者天国くらいに混雑した国境手前のエリアには、
国境を超える旅行客、国境を超えた旅行客、
そしてその旅行客から恩恵を受けようと入り乱れる現地の民。
大人、子どもが勝手に日傘をさし、荷物を運ぼうとし、小銭を要求する。
1人の旅行客に対して、5人くらいが集まり、日傘さしたり、
勝手に荷物をもってあげようとしたり、
ぞろぞろとついてくるのだ。
バスガイドの男性が大声で
「ポケットに金目の物は入れないで!
みんな、注意して!!どさくさに紛れて、ポケットから財布盗みます!
リュックも前に抱っこするように持って下さい!
リュックのポケットも勝手に開けてきます!!」
と警鐘を送っている。
なんだか僕は猿岩石になった気分だった。
でも、とても緊張していた。
肌で危険さを感じたのは、この時が初めてだったかもしれない。
僕もバックパックを抱っこし、注意深く歩いた。
が、次の瞬間、右腿に違和感を感じた。
瞬時に右に目をやると、
細長い手が、僕のポケットから素早く引っ込み、
その手の持ち主は人ごみにすぐに消えてしまった。
やられた!!!!!
と一瞬、頭が真っ白になった。
しかし、パスポートは首から下げているポーチに入っているし、
財布もサブバッグに入れて、さっきバックパックに入れた。
未だに何を盗られたのか分からないが、
きっと、チューインガムの類だろう。
この小さな出来事が、
大袈裟かもしれないけれど、
“生きているんだ”と言う鼓動を感じさせてくれた。
~つづく~
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